たまに手書きの文書を翻訳することがある。私が駆け出しだった15年くらい前は、メールよりファクスでのやりとりが多かったので手書きのビジネスレターなどをよく相手にした。日本人男性と中国人女性の間で交わされたラブレターを日本人男性の奥さんから翻訳依頼されて、自分の手がけた訳文がどういう使い方をされるのか想像して目頭が熱くなったこともある。
こういう手書き文書の中で一番困るのがカルテである。画像検索で適当なのを拾ってきたのでご覧いただきたい。
何が書いてあるのかさっぱりわからん!と投げ出してしまえたら良いのだが、引き受けた以上はなんとか解読しなければならない。こういうのはパズルのようなもので、読める漢字を拾ってその周囲に何が書いてあるのか想像力を働かせる。例えば上の画像だと2行目の後ろの方に「腸鳴」や「反跳痛」などの単語が見える。なので、「これは回診の時の記録かな」とか考えながら、拾えた漢字を頼りに医学詞典をパラパラとめくる。
まず解読できない部分としては、医師の名前、薬品名、検査結果の数値などがあげられる。これらには文脈からの類推がきかないので、草書でさらさらっとやられるとお手上げである。
先日相手にしたカルテはなんとかかんとかがんばって7割くらい拾い出した。面白かったが、終わったらさすがに疲れた。