春先のカラスはどうにも残酷で困る。
春が来るとスズメやシジュウカラがあちこちに巣を作り、中からヒナの声が聞こえる。巣の場所によってはヒナが首を伸ばして大きく口を開けているのが見えてほほえましい。
ただ、人間から見えるということはほかの動物にも見えるということである。この季節、カラスがフワフワとしたものをつかみ、屋根の上などでついばんでいるのをよく目にする。彼らにとってはいつもの食事なのかもしれないが、それがさっきまでピーピーとエサをねだっていた小さなヒナだと分かると、とてもかなしい気持ちになる。
カラスの周りを親鳥が飛び回って鳴いている。ふびんである。