こちらの記事を読んでいて、「あれ、露宇紛争と書いてあるけど、ウクライナの漢字表記って烏克蘭だから露烏紛争ではないの?」と疑問に思いました。疑問が浮かんだら調べましょう。だって僕らは漢字馬鹿。
ウクライナはソ連解体後に独立した新しい国です。1991年独立。ですので、米国や英国のように以前から用いられてきた漢字表記が存在しません。こういう国の場合、国名の漢字表記は中国の表記を参考にすることが多く、大辞泉ではウクライナの漢字表記として「烏克蘭」が収載されています。
それでは、一部サイトなどで目にする「宇克蘭」という表記はどこから出てきたのでしょう。よくお世話になる用例.jpで「宇克蘭」の用例を探しましたが、ほとんどヒットがなく、KOTONOHA「現代日本語書き言葉均衡コーパス」少納言やコーパス検索アプリケーション『中納言』でも情報は見つかりませんでした。
どうしたものかとWikipediaの外国地名および国名の漢字表記一覧を眺めていたところ、ウクライナの項目へのリンクがあり、同ページの注釈2に次のような記述がありました。
天江喜七郎が駐ウクライナ特命全権大使在任時にウクライナ日本語教師の大会で「宇克蘭」を使用するよう確認。以降、外務省、及び在ウクライナ大使館では「宇克蘭」、略称「宇」を用いている。
おお、そうでありましたか。天江氏が特命全権大使だったのは2002~2004年頃ですので、この「宇克蘭」が生まれてまだ20年ほどしか経っていないことになります。推測ですが「烏克蘭」では「カラスは国の名前としてどうよ」という声が寄せられ、「宇」なら天下を表すスケールの大きな漢字で悪い意味もないのでこちらの方が好ましいですね、みたいな感じで「宇克蘭」になったのではないかと思います。
疑問は無事解消いたしました。最初っからWikipediaを見ていれば良かったんじゃないかとも思いますが、急がば回れと言いますし、結果オーライ。ただ、「露宇紛争」などという言葉を使わないで済むならそれに越したことはありません。侵攻の1日も早い終結と宇克蘭の平和をお祈りいたします。
こちらの論文にもう少し詳しいことが書いてありました。
https://waseda.repo.nii.ac.jp/records/73019
ありがとうございます。拝見します!