「埒が明かない」などに使う「埒」という漢字は、MS明朝などの日本語フォントでは上図左のように表示され、繁体字のMingLiuでは真ん中のように、簡体字のSimSunでは右のように表示される。少しずつ形が違うが、いずれもUnicodeでは57D2という番号が与えられている同じ漢字である。「同じ漢字でも国によって形が違うんですなあ、面白いですなあ」とのんきに流しておきたいところだが、この字の場合は異体字に「埓」(U+57D3)があるのでややこしい。
現在、Pinconvで繁体字を日本の漢字に変換するデータファイルを作成しているのだが、繁体字の「埒」に対応するデータをどうするかで脳内会議が紛糾した。字形が同じなんだから繁体字から日本の漢字への変換なら57D2→57D3でもいいんじゃない?そんなこと言ったら「吞(U+541E)」と「呑(U+5451)」なんかぱっと見違いがないから変換しないでいいという話になるだろう。いやそうはならんだろう。そもそもこれはMingLiuの問題じゃないのか。ほかのフォントだとどうなんだ。文字コードに字形の話を持ち込むなよ。いや今してるのは変換の話だ。黙れ小童。なんだとこのヤロウ、わーわー。……侃々諤々、丁々発止である。
MS-IMEでは「不埒」と「放埓」で違う文字が出力されるそうだが他人事ではない。MingLiuの埒の字形が10pt以下ではSimSunと同じになったりして混乱に拍車をかける。困った時の駆け込み寺である教育部異體字字典でも軽く門前払いされた。うーむ。
結局、異体字に変換するわけにもいかんだろうということでU+57D2のままにしている。こんなのがたくさん出てこないことを祈る。