早朝のファウルカップ

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週一のペースでジムに通い、護身術を習っているのだが、二人ひと組で相手の首を絞めたり、絞められたり、股間を叩いたり、叩かれたりするので必ずファウルカップを装着する。ある程度手加減しているとはいえ、何かの拍子で強く当たってしまうことがあるし、ミットで受けていた蹴りが流れて当たってしまうこともある。ファウルカップをしていても男性の危機を感じるので、していなかったらどうなっていたことか。冷や汗を拭ったことも一再ではない。ファウルカップさん、いつも本当にありがとう。

さて、本題である。タケウチ家の朝は早く、妻が早朝5時台に起き出してジョギングに出ると、その気配を察して長女が目覚め、寝室を徘徊し始める。そして時計が6時20分を指すと、それを確認した長男が起き出してきて(彼は目覚めても6時20分までは時計を凝視している)私が寝ているベッドに潜り込んでくる。兄が起きたことに大喜びの長女もベッドによじ登ってくる。私は何とかして惰眠をむさぼろうとそれらに抗う。

最近歩き始めた長女は、ベッドの上でもよろよろ歩こうとしたり、目覚まし時計を取ってそれを私の顔面に落としたりと忙しい。退屈してくると、寝ぼけている私に向かって「あ゛っ」と声を上げる。

「あ゛っ(おとうさん、まだ寝てるの)」「あ゛っ(ちょっと起きて相手しなさいよ)」「あ゛っ(ほらちょっとそこどいて)」「あ゛っ(めがねっておいしいね)」

同じ「あ゛っ」にも色々あるものである。父は眠い。しびれを切らした長女は私の体へとダイブを始める。手を大きく広げ、顔面をみぞおちに叩きつけたり、後ろ向きになって倒れ込み、後頭部を私の鼻先にぶつけたりする。ありとあらゆる場所を攻撃し、最終的には私の腰のあたりに陣取ってのけぞりダイブを敢行する。おじょうさん、そこは金的といって男の命にかかわるエリア、と説明したところで通じる相手ではない。私も必死に防御するが相手はハードパンチャーなのでダメージは不可避である。とてもではないが寝ていられない。私は涙をこらえて身を起こし、東の空を見る。私は決心した。今晩からファウルカップを装着して寝る。

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