育児書というのがどうにも信用できない。核家族化が進む昨今、我が家もやっぱり核家族なので子育てで分からないことがあったら医者に聞いたり、ネットで検索したり、本を読んだりして乗り切ることになる。書店で育児関係の雑誌やムックを手にする機会も増えた。そしてそのたびにイライラする。
「赤ちゃんはLとRの発音の違いが分かります。さあ、早期英語教育を!」とかいうのを読んでいると、売り物なのに床に叩きつけたくなる。翻訳者の私が言うのも何だが言語というのは手段である。伝えたい何かがあってはじめて出番が回ってくるのが言語であって、伝えたいことが何もない人間が母国語以外の言語を習得しても何の役にも立たない。逆に論理的な思考回路ができあがっていれば、外国語なんか後から何とでもなる。
育児本を眺めていると、こうやって文句をつけてるうちにエキサイトしてくるので(これはほんの一例である)、最近は読まなくなっていたのだが下の本は良かった。河合隼雄の本を読んだのはこれが初めてである。とても良かった。
Q&Aこころの子育て―誕生から思春期までの48章 (朝日文庫)
朝日新聞社 2001-09 |
親というのは自分は自分らしく生きたいとなどというくせに、子どもには没個性的な「良い子」を押しつけがちだ、というようなことが書いてあって(正確な言い回しは忘れた)実に考えさせられた。親子関係がうまくいってないときは、まず夫婦関係を検証しよう、というのにも考えさせられた。家族に関するさまざまな問題が示され、それについて河合氏が自分の考えを述べるのだが、やわらかいのは語り口だけで、問題の本質をむんずとつかみ出すところには凄みを感じるというか圧倒された。今この時期にこの本を読めて本当に良かった。私の評価もAmazonと同じ星五つである。